中島義道『カインー自分の「弱さ」に悩むきみへー』には心を抉られます①

book

中島さんの『カイン』は、その著書の中でぼくが一番好きな著作です。

中島さんは少年時代から大学途中まで、非常に息苦しい日々を送られていました。

体育ができない、給食が食べられないなど様々な苦しみを味わってきた氏ですが、彼を最も苦しめたものは「周りからの好意の目線」でした。

周りの期待に応える為に、動く。本当の自分はそこにはいない。他人の人生を走り続けたのです。

ですが、氏はその欺瞞性に気づいていました。そうして、本当の自分を取り戻す戦いが始まるのです。

長い年月をかけ、自分を取り戻した氏は、今度は当時の自分のような悩みに苦しむ青年に、弱さを乗り越えるアドバイスを与えます。その内容が、この『カイン』に収められています。(フィクションでしょうが。)

ぼくが「弱い人」に言いたいこと、それはきみが強くなりたいのだったら、強くなる修行をしなければならない、ということだ。だが、それには多大な犠牲が伴う。ぼくはあまりにも不幸であったから、しらずしらずに自分が生き抜くためにその技術を身につけていったが、きみは犠牲の大きさに悲鳴をあげるかもしれない。その場合、きみは強くなることをあきらめるべきである。そして弱いままに生きる道を探るべきである。ーはじめにより

早速紹介しましょう。

①なるべく人の期待に背く

僕たちはしらずしらず、周りの期待に応えようとします。他人の期待に応えることを、あたかも自分の「やりたいこと」とみなすことさえあるのです。

そんな自己欺瞞を乗り越え、自分のしたいことを追求するには、「他者の期待に背くべき」と氏は提案しています。

きみを理解し、きみを期待し、きみを温かく見守るやさしい者どもを信じてはならない。彼らはきみを破滅させる。彼らから離れること、彼らの「やさしさ教」から自分を解放すること。それにきみは全力を傾けねばならない。ー本文より

②怒る技術を体得する

人は怒りを隠して生活しています。けれども氏は、そういう状態は人間にとって不健康である、と述べています。

考えてみれば、動物である人間が怒るのはあたりまえじゃないだろうか。この自然な感情を無理に抑えつけると、からだにも心にもよくない。

 ぼくは、怒り方には技術が必要だと思う。この技術をしっかり体得することにより正しく怒ることができるんだ。怒りを無理に抑えつけているために、そして怒りの技術を学ばないがゆえに、この国ではある種の少年たちはぴいんと張ったゴム紐のようにたやすくキレてしまうのではないだろうか。ー本文より

そして、怒る技術を体得法としては、次のように言っている。

相手を苦しめることが目的ではないが、相手が苦しんでもいっこうにかまわない。苦しんで苦しんで、自殺しても場合によってはかまわないそのくらいの覚悟がなければ、怒りの習得などできるものではない。ー本文より

相手のことを考えず、あくまで「自分の修行のため」と割り切るのがコツなのだそうだ。

終わりに

息苦しい世の中で、氏の正直すぎるマイナスに偏った言葉たちは却って元気を与えてくれます。

欺瞞的な生を自覚している人にとって、目からウロコの金言集といっても良いでしょう。

ただ毒が強いので、氏の言葉を鵜呑みにして他に振り回すのは危険なので避けた方が無難でしょう。その場合、氏のいう通り「弱いままに生きる」しかないのです。

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