『幸せになる勇気』。あの最強ミリオンセラーの続編!!!
3年ぶりに哲人を訪ねた青年が語る衝撃の告白。それは「アドラーを捨てるべきか否か」という苦悩だった。アドラー心理学は机上の空論だとする彼に「貴方はアドラーを誤解している」と哲人は答える。アドラーの言う、誰もが幸せに生きるためにすべき「人生最大の選択」とは何か? 貴方の人生を一変させる哲学問答、再び!ーamazon 内容紹介より。
『幸せになる勇気』がでた!
発売を知った時はもう飛び上がりました。
購入直後にちょっぴり紹介記事を書いたんですけど、
さらりと紹介した程度でした。
なので今回改めて、ちゃんとした書評を書きます!
さっそくいってみましょう!
コンセプト:『嫌われる勇気』で示された幸せを、「どのように実現するのか?」
この本は前著『嫌われる勇気』で示された「幸福への道」をどのように実現するか、というテーマで書かれています。
『嫌われる勇気』の中で幸せへの道を確信した青年は、その哲学を次世代に伝えるべく教師の道を選び、教育現場で奮闘。
しかし、アドラー心理学を教育の場に応用した彼は、大きな挫折を味わいます。
そのせいでアドラーにたいして懐疑的になり、師匠である「哲人」に再度議論をふっかけます。
哲人は、青年にたいして「アドラー心理学を誤解している」と説き、正しい道を再度示していく!
哲人:…..あなたはアドラーを捨てるべきです。あなたが抱いてきた、誤ったアドラー像を捨て、ほんとうのアドラーを知るべきです。ー本文より
第1章より:あなたの「今」が過去を決める!
「今の目的」に沿ったかたちで、人は過去を色付けする。
これがアドラー理解のキーポイントのひとつです。
多くの人が、「過去」が今の原因を作っているといいますよね。
しかし、アドラーはこのフロイト的な考えを真っ向から否定します。
過去が現在を規定するのではなく、現時点の目的に都合がいいように、私たちは過去を編纂し、それが真実であるかのように解釈しているのです。
哲人:…..過去が「いま」を決めるのではありません。あなたの「いま」が、過去を決めているのです。ー本文より。
主たる目的が「人に嫌われたくない」であれば、「コミュ障だから人前にでないでいい」とか、「シャイな性格だから人と話すのを避けてもいい」とか、過去の自分を「都合のいいように」編集し、いまの自分の目的を満たそうとするのです。
違うことばでいうと、人生の目的が「もっと豊かに!」であれば、わたしたちは過去の自分のあり方をも肯定するのです。
そう、全ては目的次第なのです。
第2章より:自分の理性を使う勇気を持て!
第2章において、哲人は「誰の指図も受けず、自分の理性で判断する」ことの重要性を説きます。
そして自分の理性を使っていきることこそが「自立」なのです。
ここから話は「教育」の分野に応用されます。
多くの教育者は、部下の「自立」が怖いから、怒りをちらつかせ自分の支配下に収めようとします。それは教育者の「保身」がそうさせるのです。
そうではなく、部下の「自立」を念頭におき、彼らの理性による「決断」を援助すべきである、と説きます。いやー納得納得。
哲人:……子どもたちの決断を尊重し、その決断を援助するのです。そしていつでも援助する用意があることを伝え、近すぎない、援助ができる距離で、見守るのです。たとえその決断が失敗に終わったとしても、子どもたちは「自分の人生は、自分で選ぶことができる」という事実を学んでくれるでしょう。ー本文より。
第3章より:人を褒めるな!
アドラーは第3章で「ほめること」を否定します。これにはびっくりですねぇ。ぼくは褒められて成長してきた自信がありますから…..。
哲人によると、ほめるとは、能力のある人がない人に下すもの。そして、その目的はなんと「操作」なのだ。
青年:ところが、アドラーはほめることまで否定する。3年前、その理由を伺ったとき、あなたはこんなふうに言いました。「ほめることは、”能力のある人が、能力のない人に下す評価”であり、その目的は”操作”である」。ゆえにほめてはならないのだと。
哲人:ええ、そう言いました。 ー本文より。
ところで、どうしてほめてはいけないのでしょう?
この「なぜ」の部分は前著『嫌われる勇気』に詳しく記載されていませんでしたね。
本書ではその理由も書いてありましたよ。
その理由は「競争原理に支配されるから」。
上司にどうほめられるか?ということに執着すると、どうしても競争が生まれてしまうのです。
そしてそういう競争は、他者を「敵である」とみなすライフスタイル(=世界観)を生み出す。
だからこそ、教育の場においても「褒めてはいけない」のです。
哲人:……子どもたちを競争原理のなかに置き、他者と競うことに駆り立てたとき、なにが起こると思いますか?……競争相手とは、すなわち「敵」です。ほどなく子どもたちは、「他者はすべて敵なのだ」「人々はわたしを陥れようと機会を窺う、油断ならない存在なのだ」というライフスタイルを身につけていくでしょう。ー本文より。
アドラーの目指すところは「周りの人間はみな、仲間である」という世界観ですから、ほめることは悪でしかないのです。
これは新しい見方だ。
第4章より:他人を無条件に信じろ!
第4章において、哲人は「信じること」の重要性を説いています。
自分のことを信じてほしいのなら、先に自分が相手のことを信じることが大事。
giveの精神ってやつっすね。
哲人:……わたしを信じ、アドラーのことばに耳を傾けてほしいと思っている。ゆえにわたしは、先にあなたのことを信じるのです。たとえあなたが信じようとしなくとも。ー本文より。
アドラーは実践的な人物だったらしく、どうやれば「戦争をなくせるか」を真剣に考えていました。
その戦争をなくすためにも、まずは「信じること」が不可欠なのですね。
哲人:……世界平和のためになにかをするのではなく、まずは目の前の人に、信頼を寄せる。目の前の人と、仲間になる。そうした日々の、ちいさな信頼の積み重ねが、いつか国家間の争いさえもなくしていくのです。ー本文より。
日々信頼することを積み重ねることが、なにより重要なのです。
今この瞬間、目の前の相手を無条件に信じることができるか?
そういった意味で、私たちにとって「日常こそが試練」なのです。
われわれにとっては、なんでもない日々が試練であり、「いま、ここ」の日常に、大きな決断を求められているのです。ー本文より。
第5章より:恐れずに他人を愛せ!
信頼と同様、アドラーは「無条件の愛」も重要な要素としてあげています。
なんだか宗教チックですねぇ。
この本における愛の定義は次のようなもの。
「誰かを愛するということはたんなる激しい感情ではない。それは決意であり、決断であり、約束である」と。ー本文より。
愛は行為なんですねぇ。なんだかよくわからん。
多くの人がこの「能動的に愛する」ことをおろそかにし、「誰かに愛されること」を期待しています。
その世界観から脱皮し、他人を無条件に愛すること。
それこそが「自立」の本質であり、この生き方を目指すべきだ、と哲人は説きます。
そのライフスタイルの転換に必要な、自らの変化の一歩を踏み出す勇気こそ、「幸せになる勇気」なのです。
まとめ、感想
『幸せになる勇気』は、前著『嫌われる勇気』の続編です。
もうすでに20万部突破してるとかしてないとか…..ありえん。すごすぎ。
この理由は、「嫌われる勇気」というブランドが生きてるのはいうまでもありません。
ですが、ぼくが注目したいのは、むしろ内容の濃さなんですよ。
前も述べましたが、多くの自己啓発系の本の特徴は「出落ち」なんですよ。
現代に求められる本の在り方は「速攻で楽しめる」即時性なんです。
なので、面白いコンテンツが第1章に来て、あとはダラダラ続く….というケースが多い。
そんな中、この本は最後まで濃いコンテンツでした。
だからこそ、6つに項目を分けて書評を書きました。
「人は愛することを恐れている」など、この本は最後まで金言の宝庫です。
けれども、内容は『嫌われる勇気』よりも難しかったな、というのが正直なところ。
ある意味アドラー心理学の難しさを味わえる本になってます。
でも、だからこそいいなぁ、と感じます。
わからないからこそ考える。そうやって咀嚼して納得した理解こそ、長く記憶に残るのではないでしょうか。
前著『嫌われる勇気』が刺激的な「ポテトチップス」だとすれば、
この『幸せになる勇気』は噛めば噛むほど味の出る「するめ」のような渋い一冊でした。