久々にピカイチ面白い本に出会いました。
その名も
『愛着障害』
です。
愛着障害というのは、幼児期の肉親との健全なコミュニケーションの不足による障害の事です。
学習能力やパートナーシップを上手くこなせるかどうかも、この愛着障害の有無に左右されます。
概要を順にみていきましょう。
①愛着障害の生まれる要因
愛着障害が発生する要因の8割は
「養育環境」です。(2割は遺伝。)
養育環境とは、最も知られる例だと
「親の不在」です。
この場合、子供は親の愛情を受ける事ができません。
どうやらこうした「愛情」を求める欲求は元来から備わっていて、これが不足していると自分の
「安全地帯」
が得られないのです。
子供は安全地帯があるからこそ、他人と積極的に交わる事ができます。失敗すれば親元に逃げ帰ればいいからです。
しかし、安全地帯がない子供は、自分の帰る場所がない。だから、傷付いた時の癒しがない。
だから人と交わるのが苦手。
それは「ひきこもり」だったり「道化」という形で顕在化します。
これらの発生は「幼児期の愛着による安全地帯の絶無」に原因があるのです。
②愛着障害の特性
愛着障害の人は「親との確執」があるか、「親への過度な従順」傾向を持っています。
他人と普通の人間関係を持った人がいても、親との関係が不安定な場合は実は愛着障害を抱えている可能性が高いです。
ですが愛着障害にはポジティブな面もあります。
それは「愛着障害は原動力になり得る点」です。漱石も、太宰も、谷崎も、みんな愛着障害です。オバマもジョブズもそうです。
偉業を成し遂げるには、「満たされない何か」を根っこの部分で抱えている必要があるのです。
幼児期から満たされ続けた人間は、そもそも新しい何かを生み出そうとする意欲が湧かないのです。
本文には以下のような記述があります。
芸術の分野で名を成した人には、愛着障害を抱えていたというケースが非常に多い。ある意味、そこからくる「欠落」を心のなかに抱えていなければ、直接に生産に寄与するわけでもない創作という行為に取りつかれ、人生の多くを費やしたりはしないだろう。書いても書いても癒やし尽くされない心の空洞があってこそ、作品を生み出し続けることができるのだ。ー本文より抜粋
「愛着障害」は「治すべき病」という側面と、「原動力」という側面を併せ持っているのです。
だからぼくは「障害」というネーミングには若干の違和感を覚えますねえ。
③終わりに
みなさんのなかにも
「これって私のことじゃん!」
と叫びたくなる人がいると思います。
精神病の増える現代社会において、この本は多くの人の共感を呼ぶでしょう。
そして、そういう各人に「治すべきか」という問いを投げかけてくれます。
「病気なんだから治そう!」
と思う人もいれば、
「大成した人も愛着障害なんだったら、別にいいや!」
と開き直る人もいると思います。
これは各人の自由です。
「治そう」と妙に推してこない自由度の高さが、この本の良いところ。
やっぱり抜群に面白い本は、読んだ後に何と無く考えさせてくれるんです。この本もその一つでした。
きになる方がいれば直ぐさま店頭で買ってみてください!
[amazonjs asin=”4334036430″ locale=”JP” title=”愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)”]類書もぜひ。


